2 運命の日

1995年5月21日“運命の日”

1995年5月21日。私は1年の約束で、カナダに旅立ちました。私が取得したのは、ワーキングホリデーというビザでした。これは、若い世代が一定の期間外国で過ごし、国際的な視野と、相互理解を深めるためにと設定された特別ビザです。年齢や、一生涯でただ一度しか一カ国では発行しては貰えないといった様々な制限があります。現地では、生活の足しにとアルバイトに限って就労が許可され、限られた期間でしたら語学学校にも通えます。

私がワーキングホリデー制度を利用してカナダで生活した第一目的は、愛するPEIを本当に愛せるようになること・・・過ごしやすい観光シーズンに「お客様」で行くのではなく、PEIの様々な一面(観光用ではない、生活をする上での現実)を体験すること。島の人と一緒に笑って泣いて・・・例えるならば、家族や友達、恋人の、決して完璧ではない部分 [マイナス面と言うと言葉が強いですが、おっちょこちょいだったり、すぐ怒ったり泣いたり、どじをしたり・・・などなど。あ、全部私自身が当てはまる(笑)]をも含めて好きになるように、PEIを好きになりたいという気持ちでした。それは同時に、カナダの異文化、異習慣を体験することになり、 ワーキングホリデーの目的を果たすことになります。

ですが、当時、私はカナダに移るか否か、出発前の半年程悩み続けました。理由は、当時勤めていた会社がとても好きで、残業は多かったけれどやり甲斐を感じていたからでした。そこで頂いた素晴らしい教育は、現在も私の中では大きな教訓になっています。私にとっては2度目の会社で、最初の会社が大手企業だったことで、転職した私の事を批判する人も多かったのですが、大手企業だから世界が見られると思っていた私の目の前にあったのは絶望だけでした。だから余計に自分に合った会社に出会えたのが嬉しかったのでした。

それと、アンやPEIの活動をしていくうちに、気が付いたら利用されることが多々あり、でも肝心な時には裏切られたり、無視されたり、そしていろいろと・・・本当にいろいろと誤解され・・・正に、認めたくはなくても大好きなアンに苦しめられるという現象が起こっていたのです。(決してアン自身が私を苦しめていたわけではないのですが・・・)

悩み続けて、遂には、健康には自信のある私がストレスにより大病院に行くはめになり・・・こんな状態でビザ取得の為の健康診査にパス出来るのだろうか。(ファームスティを希望していた私にとって、当時のビザ規定では30項目の問診を含めた、採血や胸部レントゲンなど、2時間半に及ぶ健康診断受診が義務付けられていました。)気持ちがはっきりしないのに、会社に辞表は出せない・・・と、これも又、心配の種でした。

けれど、悩んだ結果、私はやはり一生に一回のチャンスを選びました。会社側は、私の気持ちを理解し、「出発前ぎりぎりまで役に立ちたいので働かせて欲しい」という私を逆に心配してくれた程で、あたたかな送別会も開いて貰いました。それと、家族が賛成してくれたことで勇気が出たのか、ストレスが健康診断に影響することもありませんでした。[当時の主治医にも「ストレスは原因を何とかすれば収まるし、間違っても胸部レントゲンには写らない」と言われましたが(笑)]

これは後日談ですが、その当時の会社は、私が退職してカナダへ渡った後、上層部のメンバーが替わり、私のいた頃の会社のあたたかさは、残念ながら全く無くなってしまったそうです。あの時辞めていなかったら、こんなにも感謝の気持ちを持って現在に至ることはきっと出来なかったことでしょう。潮時だったのかも知れません。そして、PEIでの生活で出会ったたくさんの頑張る若き日本人 [旅行者、バックパ ッカー、ワーホリメーカー(ワーキングホリデービザで活動している人達)、留学生など]によって「自分の本当の気持ちを見ようとしない人の勝手な誤解に振り回されるな、傷つく必要はない」といった勇気を与えて貰うことになったのでした。

そして、カナダへ赴く決意の向こうには、PEIは勿論、通過点のはずだったオンタリオ州のトロントやスカボロ、それにニューブランズウィック州のフレデリクトンとの素晴らしい絆が出来る日々が用意されていました・・・

その「初めの一歩」である出発の日。最初の滞在地であるバンクーバ(ブリティッシ ュ・コロンビア州)へ、緊張と興奮と、そして家族とも友達ともしばらくお別れする寂 しさとを抱えて旅立ったのでした・・・

(2004.6.28)

###################################
ワーキングホリデーに関しては1995年当時と現在(2004年)ではかなりのルール改定があります。詳細は、在日カナダ商工会議所(cccj)のホームページをご覧下さい。

http://www.cccj.or.jp/jwhp.htm 

###################################

Leave a Reply