02 私だけの為のコンサート

思い出・その1、私だけの為のコンサート 。

毎年夏が来ると、思い出すことが3つほどあります。中には笑い話もあるのですが、それらをちょっとお話ししてみたいと思います。

私は1995年春から翌年の春にかけて丸1年、カナダで暮らしました。ワーキングホリデー(以下ワーホリ)という、若い世代が広く海外を理解しあえる事を目的とした特別ビザによる渡航で、最長現地滞在許可期間は1年となっています。私はその大半を日本では名作「赤毛のアン」の故郷として知られている、実はカナダ発祥の地である、東部アトランティックカナダのプリンスエドワード島(以下PEI)で暮らしました。厳しい冬も体験し、今では私のセカンドホームです。

PEIに初めて旅をしたのは、そこから遡る事3年前の1992年の事でした。ツアーだったのですが、一般のツアーとは違い、語学研修を兼ねたもので、PEIの州都にある専門学校で英語や料理、クラフトなどを学びながら観光を楽しんだり、3日間だけでしたが、ホームスティもあった内容の濃いものでした。又、そういったツアーだったのが幸いして、島に友達もたくさん出来ました。

そして3年後、6月末にワーホリでPEIに戻ってきた私は、その最初の日を、かつてホームスティさせていただいたお宅にて過ごさせていただく事になっていました。翌日から3ヶ月の間、ファームに労働スティ(現地労働を許されたワーホリビザを持っている者に許されている、労働して本来頂く賃金と、滞在費を相殺して住み込むもの)が決まっていた私のつかの間の休息でした。

トロントからバスを4回乗り換えて丸2日かかってやっと島に到着した私を、その一家はご夫妻は勿論、当時13歳と11歳の男の子2人も一緒にバスディーポにて迎えてくれました。これは予想していなかったのでもうびっくりしました。家に向かう車中でも、興奮してろれつが回らなかった程でした。

そして、家について落ち着き、散歩をした時に、子供達が私の為につんでくれた野生のルーピンの花(日本ではルピナスと言われている花)に感動していた私に、更なる、そして最高のプレゼントが!

彼らのうち、13歳の男の子は当時バグパイプに一生懸命で、11歳の男の子はドラムを頑張っていました。その彼らが庭先で、私一人の為に「スコットランド・ザ・ブレイブ」を演奏してくれたのです。前に会った時はまだ習い始める前でしたので、その後、お母様からの手紙を通じてそのことを知った私は、今回は機会が有れば是非とも聴いてみたいと思っていましたが、まさかこんなにも素敵な形で願いが叶うなんて思っていませんでした。何にも代え難い、最高のプレゼントでした。時が経ち、すでにあの子達は成人しましたが、今でも音色が甦ってきます。

その後、当時彼らが所属していたバンドがアトランティックカナダでもトップクラスのバンドだったことを知りました。又、サマーサイドと言う町にあるカレッジ・オブ・パイピングや州都でのゴールドカップパレード、コンフェデレーションセンターなどでの大々的なコンサートにて演奏する彼らを観る機会もありました。それぞれに感動があり、時にはカメラのシャッターをばちばちと押したり、手が痛くなるまで拍手をしました。

それでも、やはりあの、私の為に庭先で演奏してくれたコンサートが一番心に残っている大切な思い出です。「自分たちで出来ることを精一杯行って、何とか歓迎を伝えたい、相手を喜ばせたい。楽しい気持ちを持って欲しい。」というPEI精神が確かにそこにはありました。

ありのままのPEIを楽しんでいた私に対して、いつからか「日本に戻ったらPEIとの民間交流の架け橋になって欲しい。長くここに、それもPEIの一般家庭にずっと暮らして、越冬もし、PEIの様々な現実を見た貴女に与えられた役目だと思う」と、たくさんの島の友達に言って頂き、私自身、それを自分のライフワークだと痛感し、私に少しでも出来ることが有ればとワーホリが終わってからは少しずつ、日本でPEI伝導を中心に、民間レベルでの国際交流活動をするようになりました。

幸い良き仲間にも恵まれて、近年はその一環として、PEI滞在中にお目に掛かる公人の数も増えていますが、どこかでいつもPEIで現在を生きている方々との暖かいつながりと、そのPEI精神に助けられて来ているような気がしています。私にとってPEI交流及び伝導における一番大切な礎はそこにあり、その感謝の気持ちをいつの日も忘れずに、そのPEI精神を裏切るような事はPEIでは勿論、日本の空の下でも決してしてはいけないと、此処だけは譲らずに生きているつもりです。
(2003.7.6)

♪ワーホリ体験話は別項の「未来への切符」にて詳しくお話しする予定です。2003年現在のワーホリ制度については、カナダ商工会議所の下記案内をご参照下さい。ホームページhttp://www.cccj.or.jp/jwhp.htm

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